日本の建設業界で働く外国人材の皆さん、そして外国人材登用を検討されている企業の皆様、本ブログでは、現在技能実習生として頑張っている方が、より専門性の高い「特定技能」へと在留資格を移行するための手続きについて、詳しく解説します。特に、建設特定技能ならではの重要な要素である**「建設特定技能受入計画」**に焦点を当て、その作成から認定までの流れを具体的にご紹介します。
技能実習から特定技能への移行は、日本でのキャリアをさらに発展させるための大きなステップとなります。
技能実習制度は、日本で培った技術や知識を母国に持ち帰ることを目的としています。一方、特定技能制度は、日本の人手不足を補うために、一定の専門性や技能を持つ外国人材が長期的に就労することを目的としています。
移行の全体像:長期的な視点で準備を進めよう
技能実習から特定技能への移行は、在留資格の変更手続きを含むため、準備から完了まで半年程度かかることがあります。計画的に進めることが成功の鍵となります。まずは、移行の全体像を把握しましょう。
大まかな流れは以下の通りです。
- 特定技能への移行要件の確認
- 特定技能雇用契約の締結
- 建設特定技能受入計画の作成・認定申請
- 在留資格変更許可申請書類の準備
- 出入国在留管理庁への在留資格変更許可申請
- 在留資格変更許可の取得と特定技能としての活動開始
この流れに沿って、各ステップで具体的に何をすべきかを見ていきましょう。
ステップ1:特定技能への移行要件の確認
特定技能へ移行するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。技能実習2号を修了している方は、原則として特定技能1号の技能試験・日本語試験が免除されます。ただし、技能実習の職種と特定技能の分野に一定の関連性がある場合に限られます。
例えば、建設分野の「型枠施工」の技能実習を修了した方は、特定技能の建設分野「土木」・「建築」の業務区分へと円滑に移行できます。しかし、技能実習で「農業」をしていた方が、特定技能で「建設」分野を目指す場合は、新たに建設分野の技能試験と日本語試験を受験する必要があります。
1-1. 技能実習の修了
特定技能への移行手続きを始めるためには、まず技能実習2号を良好に修了していることが前提です。この「良好な修了」とは、技能実習計画通りに技能を習得し、失踪などの問題を起こしていないことを指します。
1-2. 特定技能1号の要件
技能実習から移行する場合、以下の要件を満たす必要があります。
- 技能実習2号を修了していること
- 移行先の特定技能分野と技能実習の職種に関連性があること
- 日本語能力試験N4相当以上の日本語能力があること(技能実習2号修了者は試験免除)
- 技能実習2号修了者として、特定技能1号の技能水準を満たしていること(技能実習2号修了者は試験免除)
移行を検討し始めたら、まずはご自身の技能実習の内容が、希望する特定技能分野と関連しているかを確認しましょう。不安な場合は、専門家への相談が不可欠です。
【出典:国土交通省ウェブサイト「建設分野における外国人技能者の受入れ」 2025年8月時点】

ステップ2:特定技能雇用契約の締結と受入計画の作成
在留資格の変更を申請する前に、特定技能での雇用契約を締結する必要があります。これは、特定技能として働くための最も重要な土台となります。
2-1. 特定技能雇用契約のポイント
雇用契約を締結する際は、以下の点に注意して、内容をしっかり確認しましょう。
- 賃金や労働時間:日本人と同等以上の待遇であること
- 業務内容:特定技能の分野に該当する業務であること
- 支援体制:企業が特定技能外国人を支援する体制を整えていること
多くの場合、技能実習を受け入れていた企業が特定技能の雇用主となることが多いです。円滑な移行のためにも、企業と外国人本人がしっかりとコミュニケーションを取り、お互いの意思を確認することが重要です。
2-2. 建設特定技能受入計画の作成と認定申請
建設分野の特定技能では、雇用契約の締結に加え、**「建設特定技能受入計画」**を作成し、国土交通大臣の認定を受ける必要があります。これは、特定技能外国人を適正に受け入れるための計画書であり、建設特定技能ならではの重要な手続きです。
受入計画の主な内容
- 雇用契約書・雇用条件書の写し
- 重要事項事前説明書の写し
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録:受入機関、および外国人材がCCUSに登録されていることが必須となります。
- 建設技能人材機構(JAC)への入会
- ハローワーク求人票の写し:国内での人材募集を行った証明
- 常勤人数の証明:建設特定技能では常勤人数と同数まで雇用可能
- 技能実習の実施状況:技能実習修了証明書や評価報告書など。
- 支援計画書:外国人の生活支援や日本語学習支援など、具体的な支援内容を記載します。
- 入国後講習の実施計画:技能実習から移行する場合でも、入国後講習の代替措置が必要です。
- 報酬の支払方法:報酬が日本人と同等以上であることを明確に示します。
建設特定技能受入計画の認定は、特定技能の適正な受け入れを証明する大切なプロセスです。特にCCUSへの登録は「事業者登録➔技能者登録」の順での申請となるため、早めに着手しましょう。
この受入計画は、技能実習修了6か月前より申請可能で外国人就労管理システムより申請します。計画の作成には専門知識が必要となるため、行政書士などの専門家のサポートを得ることが一般的です。
【出典:国土交通省ウェブサイト「建設分野における外国人技能者の受入れ」 2025年8月16日時点】
ステップ3:必要書類の準備と在留資格変更許可申請
受入計画の認定が下りたら、いよいよ出入国在留管理庁への申請です。(受入計画との並行申請も可能)
3-1. 申請書類の例
用意すべき書類は、本人の状況や企業の状況によって異なりますが、代表的なものは以下の通りです。
外国人本人が用意する書類
- 在留資格変更許可申請書
- パスポートの写し
- 在留カードの写し
- 技能実習修了証明書(検定合格証など)
- 健康診断書
- 課税・納税証明書
- 源泉徴収票の写し
- 国民健康保険料納付証明書
企業(雇用主)が用意する書類
- 建設特定技能受入計画認定証の写し
- 特定技能雇用契約書の写し
- 雇用条件書
- 支援計画書
- 登記事項証明書
- 受け入れに関する誓約書
- 役員の住民票
- 労働保険料等納付証明書
- 社会保険料納付状況回答票等
- 納税証明書(税務署発行)
- 法人税納税証明書
これらの書類は、出入国在留管理庁ウェブサイトから最新の書式をダウンロードできます。書類の作成には専門的な知識が必要となる場合があるため、行政書士や登録支援機関の協力を得ることが一般的です。
3-2. 申請のタイミングと審査期間
必要書類がすべて揃ったら、在留資格の変更許可を申請します。一般的に、在留期間満了日の3ヶ月前から申請できます。
申請から許可が下りるまでの審査期間は、地域や時期、申請内容によって異なりますが、通常2〜3ヶ月、場合によっては更に長い期間かかります。審査期間中も、本人は引き続き技能実習の在留資格で日本に滞在できます。
ステップ4:在留資格変更許可の取得と特定技能としての活動開始
審査が無事に完了し、在留資格変更許可が下りると、特定技能1号の在留資格が与えられます。
4-1. 在留カードの受領
出入国在留管理庁からハガキ(オンライン申請の場合はメール)が届いたら、指定された期限までに本人(または法定代理人・申請取次者等)が出頭し、新しい在留カードを受け取ります(オンライン申請の場合は郵送も可能)。この新しい在留カードには「特定技能1号」と記載されています。
4-2. 特定技能としての活動開始
新しい在留カードを受け取った日から、特定技能外国人として正式に活動を開始できます。これは、日本の社会でより専門的なスキルを活かし、キャリアを築いていくための新しいスタートです。
:特定技能1号を前提とした「特定活動(6月)」の在留資格について
建設特定技能では建設業特有の国土交通省への受入計画申請の認定が必要なため、出入国在留管理庁への特定技能1号の申請が間に合わない、または申請中のまま在留期限までに許可が下りないケースがあります。その様な場合はどうしたら良いのでしょうか。雇用開始日に就労出来ないという事態を回避するために、「特定活動(6月)」という在留資格を申請することがあります。この在留資格では特定技能1号と同等の就労条件での就労が可能となりますので、期間的に厳しい場合はご検討されることをおすすめします。
まとめ
技能実習から建設特定技能への移行は、将来のキャリアを考える上で非常に価値のある選択肢です。この手続きを円滑に進めるためには、建設特定技能受入計画の作成と認定が不可欠です。
手続きには時間と労力がかかりますが、一つひとつのステップを丁寧に進めることで、成功への道筋が繋がります。この記事が、移行を考えている外国人材の皆さん、そして受け入れ企業の皆様の一助となれば幸いです。もしご不明な点があれば、お気軽に弊所までご相談ください。
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