「警備業」が特定技能の対象に?警察庁の有識者会議で検討開始

※本記事は、2026年9月に開催された第1回「警備業への外国人材の受入れに関する検討会」の公表資料をもとに、現時点の検討状況を整理したものです。警備業を特定技能・育成就労の対象に追加することや、受入れ要件が決定したものではありません。

目次

警備業への外国人材受入れについて検討が始まりました

人手不足に悩む警備事業者にとって、注目すべき動きが始まりました。

警察庁は2026年9月、「警備業への外国人材の受入れに関する検討会」を設置し、警備業を在留資格「特定技能」と、2027年4月から始まる「育成就労」の対象分野に加えることが妥当かどうか、検討を開始しました。

ただし、現段階はあくまで有識者による検討の入口の段階であり、「警備業で特定技能外国人を採用できることが決まった」「すぐに採用手続を始められる」という状況ではありません。

検討会では、外国人材の受入れそのものの是非に加え、対象とする警備業務、日本語能力、技能評価、受入人数、事業者に課す追加要件など、具体的な制度設計をこれから議論していく予定となります。

背景にある警備業界の人手不足と高齢化

警察庁の資料によると、2025年末時点で、全国の警備業者は1万949社、警備員は59万6,985人です。その一方で、警備員のうち60歳以上が4割を超え、警備員数100人未満の事業者が全体の約9割を占めています。

施設警備や交通誘導などの需要があるにもかかわらず、募集をしても人が集まらない、採用しても定着しない、現場を支える人材の高齢化が進んでいる・・・こうした課題を感じている事業者も多いのではないでしょうか。

現在も、永住者や日本人の配偶者など、就労制限のない在留資格を持つ外国人は警備員として働くことができ、2025年末時点で7,270人の外国人が警備業に従事しています。しかし、警備業そのものを就労目的とする特定技能の対象には、現在のところ含まれていません。

今回の検討は、人手不足への対応策として、一定の日本語能力と技能を備えた外国人材を、警備業で計画的に受け入れる仕組みを設けられるかを考えるものです。

なぜ警備業では慎重な検討が必要なのか

警備業は、人の生命、身体、財産を守る仕事です。現場では、異常の発見、警察や消防への連絡、避難誘導、負傷者への対応など、状況を正しく把握し、速やかに判断・行動する力が求められます。

また、警備員には警備業法上の欠格要件があり、新任教育や現任教育も義務付けられています。外国人材を受け入れる場合にも、安全性や警備業務への信頼を損なわない仕組みが欠かせません。

そのため検討会では、外国人材の受入れに対する国民の不安にどう対応するか、警備員の欠格要件に該当しないことをどのように確認するかといった点も論点に挙げられています。

今後検討される主なポイント

第1回資料では、今後議論を深める事項として、主に次の点が示されました。

1.どの程度の日本語能力を求めるか

特定技能1号では、一般に日本語教育の参照枠A2相当以上が基本とされています。ただし、警備の現場では、指示の理解だけでなく、緊急時の通報、来訪者への説明、周囲への呼びかけなども必要です。このため、警備業の実情を踏まえて、どの水準が適切かが検討されます。

2.どの警備業務を対象にするか

警備業務には、施設警備、交通誘導、雑踏警備、貴重品運搬、身辺警護、機械警備などがあります。これらのうち、外国人材が担当できる業務をどこまで認めるのか、業務区分をどのように設けるのかは、まだ決まっていません。

3.技能をどのように確認・育成するか

特定技能1号は、原則として一定の技能試験と日本語試験に合格した即戦力人材を受け入れる制度です。一方、育成就労は、3年間の就労を通じて特定技能1号相当の人材を育てる制度です。警備業務の知識・技能をどのような試験で確認するか、育成就労では何を「主たる技能」とするかが今後の論点です。

4.受入人数と事業者の追加要件

受入見込数は、人手不足の状況を客観的な統計等で示したうえで設定され、上限として運用される見込みです。また、欠格要件の確認方法、受入事業者の範囲、受入人数の上限、業界団体への加入など、警備業独自の「上乗せ基準」が設けられる可能性もあります。

5.転籍と長期的なキャリア

育成就労では、一定期間の経過後、本人の希望による転籍が認められます。警備業における転籍制限期間を1年とするか2年とするか、また、育成就労から特定技能1号、その先のキャリアをどう描くかも検討されます。

警備事業者が今から確認しておきたいこと

制度の詳細はまだ決まっていないため、現時点で外国人の募集や雇用契約を急ぐ段階ではありません。一方、受入れを将来の選択肢にしたい事業者は、現在の採用難や欠員数、担当させたい業務、教育体制、外国人社員を支援できる社内体制などを整理しておくとよいでしょう。

検討会は、2026年10月以降に日本語能力や対象業務などを議論し、2027年1月に報告書を取りまとめる予定とされています。資料では、仮に受入れを行う場合、2028年度からの開始も視野に入れた記載がありますが、これも現時点の想定であり、開始時期が確定したものではありません。

警備業への特定技能・育成就労の導入は、人材不足を解消する可能性がある一方、安全・安心を担う業界だからこそ、慎重な制度設計と十分な受入体制が求められます。今後も、検討会の議論や分野別運用方針、受入要件の公表を継続して確認する必要があります。

当事務所では、特定技能制度や外国人雇用に関するご相談を承っています。警備業への追加についても、今後の制度動向を確認しながら情報をお伝えしてまいります。

参考資料

  • 警察庁「警備業への外国人材の受入れに関する検討会」
  • 警察庁「第1回 警備業への外国人材の受入れに関する検討会 資料」
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執筆者

東京都葛飾区の「もり行政書士オフィス」代表、特定行政書士・申請取次行政書士。

損害保険系のシステム会社でSEとして7年間勤務した後、金融系企業にて実績分析や営業支援業務に携わってきました。コロナ禍を機に行政書士試験に挑戦し、2024年に東京都葛飾区で開業しました。

現在は外国人雇用に関する在留資格手続きを専門とし、特に建設業・工業製品製造業における特定技能外国人の受入れを重点的に支援しています。採用前の要件確認から、協議会への加入、建設特定技能受入計画、在留資格申請まで、企業ごとの状況に応じてサポートしています。

葛飾区役所の外国人相談員としても、外国人の方や受入れ企業からの相談に対応しています。

複雑で分かりにくい外国人雇用の制度や手続きについて、事業者の皆さまにできるだけ分かりやすく、実務に役立つ情報をお伝えします。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

note → https://note.com/gyomorioffice/

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